ポトン(POTONG):バンコク中華街の革新的なタイ中華レストラン

ポトン バンコク中華街

※本サイトの記事には広告が含まれています

ポトン:バンコク中華街で話題のファインダイニング

ポトン(Restaurant POTONG)は、2021年にバンコク中華街・ヤワラートに誕生した革新的なタイ中華レストランです。舞台となるのは120年前に建てられた建物。洗練された料理を楽しみながら、華人文化や歴史を体感できる唯一無二のダイニング体験が楽しめます。

ポトン バンコク中華街
120年前の古い建物でいただく革新的なタイ中華料理

オーナーシェフは、2025年に「世界最優秀女性シェフ」に選ばれたピチャヤー・スントーンヤナキット氏(通称、パムシェフ)。祖先の薬局にインスパイアされた料理は、タイ華人の漢方やスパイスを取り入れた独創的なスタイルです。オープン間もなくミシュラン一つ星を獲得し、現在はバンコク中華街を代表するレストランのひとつとなっています。

パムシェフの経歴とコンセプト

パムシェフは、タイ史上最年少でミシュラン1つ星を獲得した実力派。ニューヨークの世界最高峰の料理学校「カリナリー・インスティトゥート・オブ・アメリカ(CIA)」で西洋料理を学び、その後ニューヨークの3つ星レストラン「ジャン・ジョルジュ」で修行しました。西洋的な調理技術とアジアのスパイスを融合させ、モダンな「タイ中華」を再構築しています。(参照サイト

ポトン バンコク中華街
パムシェフの祖先は漢方薬局を営む福建系華人

漢方薬局から生まれ変わった120年前の建物

パムシェフの祖先は、金門島からタイに移住した福建系華人。漢方薬の販売で成功し、この地に5階建ての社屋兼住居を建てました。創業した「普通(ポトン)大薬房」では、特に女性向け漢方「保坤益母藥」が有名だったそうです。移転後も建物は一族が所有し、現在はレストラン「ポトン」として再生。古き薬局の記憶が現代に息づいています。

漢方薬 瓶
店内に飾られたポトン薬局の人気漢方薬「保坤益母藥」の瓶

大規模リノベーションにより、建物は古さを残しつつモダンで快適な空間へと変わりました。ビル全体がレストランとなっていて、各階が次のように利用されています。

1階:ラウンジ&バー

2階:メインダイニング

3階:キッチン

5階:ルーフトップバー

ポトン バンコク中華街
1階のラウンジ&バー
ポトン ルーフトップバー
5階のルーフトップバーから中華街の街並みを見渡す

ガラス張りの小型エレベーターで移動しながら、インテリアやキッチンがちらりと見える仕掛けもユニーク。店内には薬瓶や古い写真が飾られ、パムシェフが祖先の記憶を大切にしながら、その想いをレストランのコンセプトに活かしていることが伝わってきます。

ポトン エレベーター
2人乗るのがギリギリの小さなエレベーター

ディナー体験:バンコク中華街の歴史を旅する

漢方文化を感じるウェルカムドリンク

楽しみにしていたディナー当日。雑然としたバンコク中華街の通りを歩いていると、小さな路地に「ポトン」の看板を見つけました。周囲はいつもの中華街の風景そのもの。そんな場所に、洗練されたファインダイニングのレストランがひっそりと佇んでいることに驚かされます。

バンコク中華街 路地
バンコク中華街の路地裏にある「ポトン」

店内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、漢方薬の瓶がずらりと並ぶバーカウンターとショーケースのようなテーブル席。

ポトン バンコク中華街
古い薬瓶がずらりと並ぶバーカウンター

ショーケースには、ポトンの歴史にちなんだ古い薬や写真が博物館のように飾られています。

テーブル 漢方薬
ガラス張りのテーブルはまるで博物館のよう

ウェルカムドリンクのコンブチャが供され、普通大薬房の歴史やレストランのコンセプトが紹介されます。まるでショウが始まる前のプロローグのように、これからの食体験への期待を高めてくれます。

ポトン バンコク中華街
レストランの歴史とコンセプトを説明してくれます

ルーフトップバーで楽しむアペリティフ

次に店内のエレベーターで5階のルーフトップバーに移動。ここでは3種類のアミューズとともに、ノンアルコールのカクテルがサービスされました。日が暮れかかる時間帯で、眼下に広がる中華街の街並みと、洗練されたバーの雰囲気が対照的で、まるで別世界に迷い込んだような感覚に包まれます。

ポトン アミューズ
タイ中華料理にインスパイアされた3種のアミューズ

モダンタイ中華のコース料理体験

ポトンのメニューは、シェフおまかせのコース料理(6,300バーツ)のみ。中華系タイ料理を再解釈した革新的な料理が次々と登場します。料理が運ばれるたびに、スタッフから料理の背景にある歴史や文化の解説が添えられ、物語を聞いているようなプレゼンテーションも魅力です。

ポトン バンコク中華街
メインダイニングに戻っていよいよタイ中華料理のコースをいただきます

最初の一品はチキンスープ。チキンと生薬のエキスを凝縮した瓶入りスープ(ซุปไก่สกัด)は滋養強壮に良いとされ、タイでは贈答品としても好まれています。スパイスが効いた独特の香りが立ち上り、シンプルながらも奥深い一品で、コースの幕開けに相応しい一品でした。

ポトン チキンスープ
最初の一品はタイで人気の生薬入りチキンスープのアレンジ

タイの屋台料理のルーツは中華系タイ人

次の料理は、タイの屋台でも人気の「クイチャップ」をアレンジしたもの。クイチャップはもともと華人が持ち込み、やがてタイ料理として定着した米麺料理です。ポトンでは、キャビアと組み合わせ、日常的な屋台料理を極上の一皿へと昇華させており、その工夫とアイデアに驚かされます。

ポトン タイ中華料理
屋台料理「クイチャップ」をキャビアと組み合わせて

さらに続くのは、ポーク・サテーとカノムパン・ピンのアレンジ版。どちらも屋台スナックとして人気ですが、そもそもサテーはムスリムの料理であり、本来は豚肉を使いません。それを豚肉でアレンジしたのが、華人たちの食文化の柔軟さでした。また、炭火で食パンを焼いたカノムパン・ピンも、商売が得意な華人の発想から生まれたものです。

こうした歴史を踏まえた上で、ポトンが提供する「進化した屋台料理」は、ポークがホタテになって、オリジナルを遥かに上回る絶品へと変化していました。

ポトン バンコク中華街
バンコクの屋台料理の原型からはかけ離れた上品な料理

タイの国民食「パッタイ」誕生の歴史

次に登場したのは、誰もが知る人気のタイ料理「パッタイ」をアレンジした一皿。料理の背景を知ることで、より深く楽しめる趣向です。

お弁当箱のような器には、かつてタイのナショナリズムを推進したピブンソンクラーム首相の写真が貼られています。

20世紀初頭のバンコクでは、中華系移民の増加が社会問題となり、タイらしいアイデンティティを守る動きが強まりました。その中で、ピブンソンクラーム首相が推進したのが、海老やタマリンドソースなど、「タイらしい食材」を使ったパッタイです。もっとも、その元となった炒め麺自体は中華料理に由来しているのですが…。

ポトンのパッタイは、海老の上にタイ国旗の色に染められた三色の米麺がそっと載せられ、ちょっと皮肉混じりのユーモアを感じました。

ポトン パッタイ
人気料理「パッタイ」誕生の歴史を表現するユニークな盛り付け

遊び心あふれる演出と、締めの鴨料理

メインの魚料理は、タイの代表的なスープ「トムカー」というココナッツミルクのスープをアレンジした一品。ココナッツミルクのまろやかさが際立ち、これまでの中華系ルーツの料理に比べると、ぐっとタイ色の強い印象を受けました。中華とのつながりを意識しながらも、ここであえてタイ料理らしさを強調した構成なのかもしれません。

ポトン バンコク中華街
タイ料理のスープ「トムカー」のエスプーマをソース仕立てにした魚料理

そして、最後のお肉料理がサービスされる前に、ユニークな演出が。スタッフが大きなボックスを抱えて現れ、蓋を開けると中には色とりどりのお箸がずらり。好きなお箸を選んでからメインディッシュをいただくという仕掛けでした。

ポトン お箸
箱の中にずらりと並んだ色とりどりのお箸

締めくくりは鴨料理。これまでの料理が「タイに根付いた華人料理」だったのに対し、ここではストレートに“中華らしさ”を感じる一品です。数種類のソースや付け合わせの野菜、ご飯とともにいただき、ボリュームも満点。コースの最後に相応しい満足感を味わえました。

ポトン 鴨料理
最後に中華らしい鴨料理で締めます

楽しさいっぱい食後のデザートとお茶

食後に登場したのは、大きなアイスの塊。驚いて見ていると、なんと氷をひっくり返すと、中から小さなソルベが登場するというサプライズ。ポトンらしい遊び心あふれる演出に感動しました。

ポトン ソルベ
お口直しのソルベは大きな氷の塊に隠されていました

お口直しのソルベに続き、メインのデザートは中華街の歴史と関連するビルをイメージした白いケーキ。スタッフがバンコクの写真を持って、ストーリーを語ってくれます。

ポトン バンコク中華街
バンコクの街の写真を使ってケーキのコンセプトを説明

さらに、トレーいっぱいに並んだ瓶から好きなお茶を選ぶサービスも。私はナコンシータマラートのカカオ・ティーを選びました。

ポトン デザート
バンコクのビルがデザインされたケーキ

4種類のプティフールとともに、食後のお茶を楽しみました。どのお菓子も美味しかったです。

ポトン プティフール
どれも美味しかった4種のプティフール

締めくくりには、小さな引き出しがたくさんついた箱が登場。好きな引き出しを開けてみると、おみくじのようにメッセージの付いた小さな袋が入っていて、自分が選んだメッセージを読んで一喜一憂しました。

帰り際には、かつての「ポトン大薬房」の商標である虎マークの入った小さな嗅ぎ薬をお土産としていただきました。レストラン体験が単なる食事で終わらず、文化や歴史を感じられる余韻を残してくれます。

ポトン おみくじ
引き出しを開けて私が取り出したメッセージ付きの袋

感想:バンコク中華街をテーマにしたエンターテイメント

ポトンでの食事は、単なる料理の美味しさ以上に、中華街の古い薬局ビルを探検するようなワクワク感を味わえる体験でした。タイ料理として定着した華人料理のルーツや、漢方を意識したスパイスの独特の風味にも触れられ、料理の完成度とコンセプトの両方を楽しむことができます。

タイで暮らしていると、何が中華系で何がオリジナルのタイ系なのかわからなくなるほど、華人文化はタイ社会に深く根付いていますが、それでも中華系タイ人は独自のアイデンティティを維持し続けているのだと改めて実感しました。

全体を通して、料理だけでなく演出や空間、文化的背景も含めたエンターテイメント性が非常に高く、ユニークな食事体験ができるレストランだと感じました。

バンコク中華街
タイ社会には中華系移民が多く、タイと中国の文化が自然に融合している

ポトンの予約方法とアクセス

予約方法

ポトンは注目のシェフのお店で、予約も取りにくいため、余裕を持って計画することをお勧めします。予約は公式サイトから可能で、訪問希望日の4ヶ月前から受け付けています。予約時には、一人につき1,000バーツのデポジットの支払いが必要です。

アクセス(バンコク中華街)

お店はバンコク中華街の小さな路地にあり、少しわかりにくいかもしれません。私はMRTワット・マンコン駅からグーグルマップを使いながら徒歩で向かいました。帰りはお店でGrabタクシーを呼びました。狭い路地でも、近くまで車で来てもらえます。

ポトン バンコク中華街
お店のそばにある標識が目印

併設のオピウムバー

館内には「オピウムバー」というバーもありますが、私が訪問した日はちょうど仏教の祝日だったため、アルコールの提供ができずクローズしていました。訪問前に営業状況を確認するといいでしょう。

ポトンの基本情報

ポトン バンコク中華街
Restaurant POTONG (โพทง)
住所:422 Vanich 1 Rd. Samphanthawong, Bangkok 10100 Thailand
営業時間:16:30-(ラストオーダー20:00)
定休日:水曜日
アクセス:MRTワット・マンコン駅から徒歩5分
公式サイトhttps://www.restaurantpotong.com

ポトン(バンコク中華街)の地図

5/5 - (1 vote)