タイ 王宮 の歴史・見どころと観光の秘訣

タイ 王宮

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歴史と文化に彩られた奥の深い タイ王室の王宮

タイ 王宮 (グランドパレス Grand Palace) は、タイ国王の王宮であると同時に、バンコク観光のハイライトとして、バンコクを訪れる世界中の観光客が必ず一度は訪れる、とても有名な場所です。広大な敷地には、タイの芸術文化の最高峰ともいえる煌びやかなワットプラケオ(エメラルド寺院)や数多くの歴史ある壮麗な宮殿が立ち並んでいて、そのスケールの大きさと豪華さに圧倒されることでしょう。バンコクを訪れたら、絶対に行くべき観光スポットといえます。

タイ 王宮

それほど素晴らしい場所ですが、タイに長く住んでいる人や、王室を非常に敬うタイ人ですら、普段に王宮を観光する人ってあんまり見かけません。一つには、いつでも行けるからというのもあるでしょうが、何よりも王宮の観光はいろいろと疲れる点もあるというのが本音ではないでしょうか。暑くて、人混みがすごくて、詐欺師やぼったくりまで現れます。一度行ったらそれで十分・・・と感じてしまいがちです。在住者でも、日本から訪問者が来たときに案内するくらいで、あまり王宮のことをよく知らない人も意外と多いのです。

エメラルド寺院

でも、少しでも王宮の歴史や文化を理解すると、その奥深さや素晴らしさを改めて実感することができるでしょう。それに在住者なら、だれか旅行者をアテンドする場合でも、いろいろ便利なものです。それでは、タイ 王宮 の歴史や見どころ、そして観光の秘訣などを、改めてご紹介してみましょう。

タイ 王宮


バンコクに現在の王宮が建てられた背景

バンコクに王宮が建てられる前、タイの首都はアユタヤにあり、立派なアユタヤ王宮が建てられていました。でも1767年にビルマ軍が攻め込み、王宮もアユタヤの町もすっかり破壊されてしまいました。そこで1768年に、タクシン王が即位し、現在のワットアルン(暁の寺)のそばにトンブリ王宮を建て、初めてバンコクがタイの首都になりました。しかし、ラーマ1世(在位1782〜1809年)はタクシン王を精神攪乱を理由に処刑し、自らが王位に就くと現在のラタナコーシン王朝を創設しました。

アユタヤ王宮

破壊されたアユタヤ王宮跡

ラーマ1世は新しい王宮を建てる場所として、トンブリ王宮とはチャオプラヤ川をはさんで対岸にあるラタナコーシン島を選びました。そして3年の年月をかけて現在のグランドパレスが建てられたのです。当時の王宮は、グランドパレスのほかに、副王が住む前宮と副王の次に位の高い王族が住む後宮の3つの王宮で構成されていました。グランドパレスは、タイ語では「ワンルアン(主宮)」という通称で呼ばれています。

ラーマ1世

パーククロン花市場の近くにあるラーマ1世像


3つの区域がある王宮の構造

王宮を観光で訪れると、その広さにきっととても驚くでしょう。でも、観光客が見学できるのは、王宮全体のたった3分の1で、あとは一般公開されていません。タイ王宮の観光といえば、ワットプラケオ(エメラルド寺院)が最も有名ですが、あの壮大な寺院ですら、王宮の敷地全体のたった9分の1にすぎないのです。

王宮の敷地は、外域(チャンノーク)、中域(チャンクラーン)、内域(チャンナイ)の3つに分かれています。それぞれの区域は大きな壁で仕切られていて、それぞれに目的があります。観光客が見学できるのは、外域と中域の一部のみです。あんなに広いと思ったグランドパレスも、実はまだまだ奥に広大な敷地が広がり、たくさんの宮殿や建物が建っているのです。本当に想像をはるかに超えたスケールです。3つの区域のそれぞれの特徴は次の通りです。

エメラルド寺院

王宮の全体図 (出典:グランドパレスのウェブサイト)

タイ 王宮

外域と中域を隔てる大きな門

外域(チャン ノーク)

外域は、王宮の門を入って最初にあるエリアです。王宮の中で、最も一般の人が出入りしやすい場所で、王室の菩提寺であるワットプラケオもこの外域にあります。 かつてタイは、国王が全統治権をもつ絶対君主制でした。そのため、主な行政機関も王宮内の外域に建てられていました。でも、1932年に立憲革命が勃発し、立憲君主制に移行すると、行政機関の多くは王宮の外に移転していきました。現在は王室に関係する行政機関だけが王宮内に残っています。 また、かつて行政機関として建てられた洋館を利用した、ワットプラケオ博物館(元造幣局)やクイーンシリキットテキスタイル博物館(元大蔵省)もあり、一般公開されています。グランドパレスの入場券で、博物館もすべて見学することができます。

タイ 王宮

外域に立並ぶ政府機関

中域(チャン クラーン)

中域は、国王の公務と私的な生活のための美しい宮殿が建ち並ぶ、王宮の最も重要なエリアです。これらの宮殿には、ラーマ1世からラーマ5世まで、歴代の国王が暮らし、王室の儀式が行われてきました。ラーマ5世の時代(在位1868〜1910年)になり、1899年にドゥシット宮が建てられると、国王や王族たちの住まいは次第にドゥシット離宮に移っていきましたが、現在でも戴冠式や葬儀といった王室の重要な儀式はこの中域にある宮殿で行われています。 王宮観光では、ワットプラケオの外域側の入口から入場し、ワットプラケオを見学した後、中域に続く別の出口から出て、主な宮殿の前を外側から見学できるようになっています。

タイ 王宮

宮殿が建ち並ぶ中域

内域(チャン ナイ)

内域は、国王の妃や王女など、王族女性が暮らしていたエリアです。国王以外は男子禁制で、いわゆる日本の後宮(こうきゅう)と同じような場所です。王宮を囲む白い外壁のさらに内側に内壁があり、その内壁の中に王族女性の屋敷が建ち並び、まるで小さな町のようだったそうです。昔のタイの王様は一夫多妻で、ラーマ5世には4人の正室と32人の側室、そして77人の王子や王女がいましたので、内域に住む人の数も飽和状態だったようです。 ラーマ5世がドゥシット宮に移り住むと、内域の女性たちも、ドゥシット宮の周辺に新しいお屋敷を建てて、移り住んでいったそうですが、今でも当時のお屋敷がそのまま内域に残っています。

残念ながら、観光客は立ち入り禁止のため、中の様子を見ることはできませんが、王宮内にあるワットプラケオ博物館の2階には、王宮全体のレプリカがありますので、是非一度見てみてください。本当に町のように無数のお屋敷が建ち並んでいるのがわかります。 かつて内域は、未婚の貴族の女性たちが女官として宮仕えをし、料理や手芸などの手仕事やマナーなど、上流女性のたしなみを身につける、いわば花嫁修業の場所でもあったそうです。フルーツカービングや宮廷料理といったタイの宮廷文化の多くは、この内域の女性たちによって生み出されたものです。

タイ 王宮

王宮の外壁からちらりと見える内域の建物


グランドパレス内の主な宮殿

グランドパレスの中域には、現存しているだけでも、20以上の宮殿があります。館内へは一切立ち入ることができませんが、王宮観光の際には、いくつかの主な宮殿の正面を見学することができます。それでは、主な宮殿を実際の観光の際に見える順にご紹介しましょう。

タイ 王宮

ワットプラケオから宮殿のある中域への出口

ブロムピマーン宮殿

ワットプラケオを出てすぐ左に見えるのは、西洋風のブロムピマーン宮殿です。門の鉄柵が閉じられ、入口を近衛兵が見守っています。ラーマ1世がグランドパレスを建てた当初は、広大な庭園がありましたが、ラーマ5世の時代に皇太子御所として建てられた宮殿です。しかし、当時皇太子であったラーマ6世には男性の家臣がたくさんいて、男子禁制の内域と宮殿の敷地が接していたため、状況を配慮して実際には住まなかったそうです。現在は、外務省が管轄する迎賓館として使用されています。

タイ 王宮

ブロムピマーン宮殿

アマリンタラウィニッチャイ宮殿

ワットプラケオの出口を出てすぐ正面に見えるのは、ラーマ1世が王宮を建てた当初に建設されたタイ様式のアマリンタラウィニッチャイ宮殿です。正面からはあまり見えませんが、実は奥の方にもずっとつながった非常に大きな宮殿です。一つの宮殿に見えますが、実際には、5つの宮殿が集まっていす。ラーマ1世が私的な生活の場所として使用していたそうです。

タイ 王宮

アマリンタラウィニッチャイ宮殿

ドゥシダーピロム宮殿

アマリンタラウィニッチャイ宮殿のすぐ右にある小さな高床式の宮殿は、ラーマ1世によって建てられたドゥシダーピロム宮殿です。昔の王様の乗り物であった象や神輿(サリアン)に乗るときに使用されたそうです。

タイ 王宮

ドゥシダーピロム宮殿

チャクリーマハープラサート宮殿

グランドパレスの中で一際目立つ中央の大きな宮殿は、1876年にラーマ5世によって建てられたチャクリーマハープラサート宮殿です。当初は11の宮殿で構成される壮大な宮殿でしたが、年月とともに損傷してきたため大改修が行われ、今では3つの宮殿しか残っていないそうです。西洋とタイの建築様式をミックスした宮殿で、タイの西洋化の進んだラーマ5世の時代が反映されています。

タイ 王宮

チャクリーマハープラサート宮殿

アーポーンピモークプラサート宮殿

チャクリーマハープラサート宮殿の前をずっと歩いていくと、大きなタイ様式の宮殿、ドゥシットマハープラサート宮殿が見えてきますが、その手前に見過ごしてしまうような小さなアーポーンピモークプラサート宮殿があります。タイ様式の小さな美しい東屋風の宮殿です。1889年にラーマ4世によって建てられたもので、よく見るとドゥシットマハープラサート宮殿を囲む塀の上に建てられています。国王が外出する際の神輿乗り場のほか、子供時代の髷落としの儀式を行う場所としても使用されていました。

タイ 王宮

アーポーンピモークプラサート宮殿

ドゥシットマハープラサート宮殿

最後に見えるドゥシットマハープラサート宮殿は、ラーマ1世が1789年に建設しました。アマリンタラウィニッチャイ宮殿と並んで、グランドパレスが最初に建てられた時からある古いタイ様式の宮殿です。現在は、王族の重要な儀式を行うホールとして使用されていて、国王や王妃の遺体を安置する場所でもあります。2016年に崩御したラーマ9世の遺体も1年間この宮殿に安置された後、火葬されました。

タイ 王宮

ドゥシットマハープラサート宮殿

スッタイサワンプラサート宮殿

王宮の中域ではありませんが、もう一つ外から見学できる宮殿があります。王宮の壁に建てられた、スッタイサワンプラサート宮殿です。ラーマ1世の時代からありましたが、何度も修復され、名前も変わってきました。国王が国民の前にお出ましになる時に使用されるそうです。

グランドパレス

スッタイサワンプラサート宮殿


タイ 王宮 内のその他見どころ

ワットプラケオ(エメラルド寺院)

すでにご紹介した通り、王宮では多くの重要な宮殿を見学することができますが、観光で訪れると真っ先に訪れるのが王室の菩提寺であるワットプラケオとなります。ワットプラケオの圧倒的なスケールと美しさのため、グランドパレス(王宮)=ワットプラケオと誤解している人が非常に多いようです。実はワットプラケオはあくまでも、タイ王宮の広大な敷地の一角に立つ寺院でしかありません。(ワットプラケオの詳細を読む

エメラルド寺院

エメラルド寺院

ワットプラケオ博物館

観光ルートの最後にあたるドゥシットマハープラサート宮殿を見学して、出口に向かう時、左手に見えるのがワットプラケオ博物館です。観光ツアーでは立ち寄らないので、ついつい見過ごしてしまいがちですが、個人で行くなら一度覗いてみましょう。 もともと造幣局として建てられた洋館で、1階はワットプラケオの修復作業に関する詳しい展示が行われています。2階では宮殿に関する展示が行われていて、中でもタイ王宮全体のミニチュアは一見の価値があります。ミニチュアは2種類あり、一つはラーマ1世が当初王宮を建てた当時のミニチュア、もう一つはラーマ5世の時代と思われる比較的近年のミニチュアです。広大な王宮の全体像や王宮内部の建築物が一目瞭然となります。また、内域の王族女性のお屋敷は、当初はタイ様式の高床式の宮殿だったのが、ラーマ5世の時代には洋館に変わっているのもわかります。 ワットプラケオ博物館には、非常に貴重な展示があるにもかかわらず、ガイドも説明ボードも全くないので、いまいちわかりにくいのが難点です。

タイ 王宮

ワットプラケオ博物館

クイーン シリキット テキスタイル博物館

クイーン シリキット テキスタイル博物館 は、ラーマ9世の妃であるシリキット王妃によって、2012年にオープンした博物館です。タイの伝統的な織物文化に関する展示を一般公開しているほか、タイをはじめとする東南アジアや東アジアの織物に関する研究所、図書館などを備え、伝統的な織物の保存、継承、普及に関連した様々な事業の総合センターとして機能することが期待されています。(続きを読む

タイ 王宮

クイーンシリキットテキスタイル博物館


快適な王宮観光のコツ

冒頭にも書きましたが、グランドパレスは素晴らしいけれど、観光するのは「暑さ」「人混み」「詐欺・ぼったくり」などで、とても疲れます。多くの人が旅行会社の観光ツアーに参加すると思いますが、個人で行って見学したい方のために、ちょっとした観光のコツをご紹介しましょう。

「暑さ」対策

タイ 王宮

ロングスカートや薄手の素材の服を選ぶ

炎天下で恐ろしく広大な敷地を歩く王宮観光では、しっかりと暑さ対策をすることが大切です。王宮では、肩と膝の隠れた服装でなければ入場できません。でもとても暑いので、間違ってもジーンズなど履いて行かないように。私は、風通しのよいロングスカートに、薄手のTシャツで行くようにしています。

水や日傘を持っていく

宮殿の見学が終わったら、クイーンシリキットテキスタイル博物館で涼む

実は、グランドパレスの中で、唯一冷房があるのがこの博物館です。王宮の入場券は、この博物館の入場料も含まれていますから、追加料金なしで入れます。美しい館内を見学しながら涼むことができます。また、トイレもグランドパレスの中で一番きれいなので、ここがお薦めです。外にあるドリンクコーナーで、冷たいタイティーを買うこともできます。

「人混み」対策

タイ 王宮

朝一番に行く

王宮はバンコクで最も有名な観光スポットですので、いつも世界中から来た恐ろしいほどの数の観光客であふれかえっています。少しでも快適に見学するためには、朝一番に行きましょう。王宮は8時半に開場しますので、8時ごろまでに行って列に並び、開場とともに入場します。まだ観光客も少ないし、朝の方がずっと涼しいです。人が少ないので、写真もきれいに撮れますよ。

「詐欺・ぼったくり」対策

グランドパレス

観光地の周囲のタクシーやトゥクトゥクには要注意

王宮の周辺でタクシーやトゥクトゥクに乗らない

グランドパレスの周囲には、観光客を狙ったぼったくりのタクシーやトゥクトゥクしかいません。私は、バンコク市内からはタクシーに乗っていきますが、帰りはチャオプラヤ川のボートでサパンタクシンの船着き場まで行き、BTSで帰るようにしています。王宮から一番近いTha Chang船着場までは、徒歩5分くらいです。

近づいてくる人は無視する

「今日は王宮はお休み」だとか声をかけて、別のお店に連れていくという詐欺被害に遭う人が後を絶ちません。恐ろしく基本的なことですが、知らない人に声をかけられても、信用してついて行くのは絶対やめましょう。

可能ならタイ人の友人と行く

いくら在住者でも、タイ語が話せても、外国人である限り、ぼったくりタクシーには通用しません。相当頑固にふっかけてきます。でも運良くタイ人の友人が一緒に行ってくれれば、ぼったくりも何も言えなくなってしまいます。


タイ 王宮

タイ 王宮 の基本情報

GRAND PALACE
住所
:1 Na Phra Lan Rd,  Khet Phra Nakhon, Bangkok 10200 Thailand
アクセス:BTSサイアム駅よりタクシーで15分、又はBTSサパーンタクシン駅そばの船着場からチャオプラヤ エクスプレス ボート(約20分)→ターチャーン船着場で下船→王宮まで徒歩5分(詳しくは「詐欺・ぼったくり」対策もご参照ください)
見学時間:8:30〜16:30
入場料金:外国人500THB、タイ人は無料
入場券には、ワットプラケオ(エメラルド寺院)のほか、ワットプラケオ博物館、クイーンシリキットテキスタイル博物館などの入場券(購入日より7日間有効)も含まれています。
服装:肩や膝の隠れた服装で行くこと、体の線が見える服装(レギンスなど)もNGです。
グランドパレスのウェブサイトhttps://www.royalgrandpalace.th/en/home 

グランドパレスのマップ

王宮周辺 レストラン & カフェ:観光後の休憩スポット
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