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タイ王室の守護寺院 エメラルド寺院
エメラルド寺院 (ワット・プラケオ)は、バンコクにあるタイ王宮の敷地内にある寺院です。ラタナコーシン王朝の守護寺院であり、現在タイにある仏教寺院の中では最も格式の高い特別な寺院です。正式名はワット・プラシーラッタナサーサダラームですが、ご本尊の翡翠でできたエメラルド色の仏像(プラケオ)が安置されていることから、通常エメラルド仏寺院(ワット・プラケオ)と呼ばれています。
エメラルド寺院は、ラタナコーシン王朝の歴代の王様たちが、200年以上の年月をかけて築き上げてきた、タイ王室の仏教美術の集大成です。広い敷地には技巧を凝らした豪華絢爛な建造物がところせましと建てられていて、初めて訪れた人は、想像を絶する寺院の壮大さと美しさに度肝を抜かれてしまいます。ワット・ポーやワット・アルンと並んで、バンコクの三大寺院と呼ばれていますが、本当はワット・プラケオは他の寺院とは比べものにならないくらい、飛び抜けて格式の高い寺院なのです。
でも、観光で訪れる人は、たいてい一度行って写真を撮って、きれいな場所だったと感動して、それでおしまいです。お決まりの観光コースの1つでしかありません。本当なら、タイの仏教や美術や歴史の知識がそれなりにあれば、見どころがありすぎて、かなり楽しめる場所だと思います。私自身も、仏教や美術に関してはほとんど知識がなく、何度も行っているわりにはただ何となく「綺麗だな、すごいな」と思いながら、写真を撮って終わりです。一度、エメラルド寺院の建築文化について書かれた分厚いタイ語の本を覗いてみたことがありますが、基礎知識がない上にそこまで興味がなく挫折。
そんな私が、エメラルド寺院の見どころを紹介するなんて、本当はとても恐れ多くて、おこがましい話なのですが、バンコクに長く住み、エメラルド寺院にも何度も足を運んでいるので、多少は興味を持つ部分もあります。そこで、いわゆるガイドブックにも書いてある「一般的な見どころ」に加えて、素人目線の個人的な興味や関心を交えた「私的な見どころ」をご紹介したいと思います。
エメラルド寺院の見学方法
王宮観光といえば、ガイド付きのツアーに参加して行く方も多いと思いますが、自分で行くこともできます。王宮の門は何カ所もありますが、観光客が入れるのは王宮の北側(王宮広場寄り)にある門です。クイーンシリキットテキスタイル博物館のすぐそばにあります。
門を入ったら入口で服装検査があります。王宮に入るには、肩や膝が露出した服装では入れないので注意しましょう。その後さらにまっすぐに進むと、大きな門が見えてくるので、その手前を左に曲がったところに、外国人専用のチケット売り場があります。ここで入場券(500バーツ)を購入し、さらに左に真っ直ぐ進むとエメラルド寺院の入場門があります(みんなが行く方について歩いて行けば大丈夫です!)。
ちなみに、エメラルド寺院の敷地は、回廊で周囲をぐるりと囲まれていて、門が7カ所もあります。観光客用の入口であるプララーシー門から入って、寺院の中を見学したら、シーラッタナサーサダーラーム門から出て、王宮の中心にある宮殿が見学できるようになっています(見学順路が矢印で示してあるので、門の名前は覚える必要はありません!)。また、王宮内の宮殿の詳細については、ブログの別ページにまとめてあります。(タイ王宮の宮殿について読む)
エメラルド寺院 の見どころ
①エメラルド仏が安置された本堂(プラウボーソット)
エメラルド寺院の由来ともなっている、エメラルド仏が安置された本堂は、寺院の敷地内で最も大きな建物です。扉や壁や柱など、細部に繊細な装飾が張り巡らされています。本堂の中には、ご尊仏のエメラルド仏が安置されています。エメラルド仏の高さは約50cmほどで、豪壮な本堂の奥にあるため、肉眼ではよく見えないほど小さく見えます。エメラルド仏を囲むように何体もの仏像があり、神々しさに満ちています。本堂の内部の壁には、仏教の三界を表す豪華な絵が描かれています。
エメラルド仏は、もともと現在のラオスのビエンチャンから、ラーマ1世王が戦利品として持ち帰ったものです。当初はワットアルンに安置されましたが、ラーマ1世王がラタナコーシン王朝を創設し、新しい王宮と寺院を建立し、エメラルド仏を現在の寺院に移転させました(エメラルド仏の歴史はワットアルンのページにまとめてあります)。エメラルド仏は、タイの3つの季節(雨季、乾季、暑季)に合わせて衣替えをすることで有名です。
実は、本堂内では写真の撮影は禁止されています。そこで、みんな本堂の入口の外から一生懸命内側の写真を撮ろうとしています。私も望遠レンズを使って、何度かトライしましたが、中が暗いのでなかなかきれいな写真が撮れません。
②ラーマキエンの壁画が描かれた回廊
エメラルド寺院の周囲には、寺院全体を取り巻くように長い回廊が建てられています。その回廊にはラーマキエンという物語の壁画が描かれていて、エメラルド寺院のもう一つの見どころになっています。ラーマキエンは、古代インドの長編叙事詩であるラーマヤナのタイ版です。ラーマキエンを編纂させたのは、タクシン王、ラーマ1世王、ラーマ2世王で、ちょうどこの王宮が建てられた時代です。タイの子供達は、この叙事詩を国語の時間に暗唱させられるらしく、タイ人にとってはとても身近な物語です。
物語は寺院の北側にあるワヒラヨート門から始まります。第1の場面は、後に主人公ラーマ王子の妃となる幼いシーダーが、父親である阿修羅王トサカンの怒りに触れ水に捨てられますが、蓮の花に受け止められてマハージャナカ仙人の元に流れ着き、救出されるシーンです。その後、成人してラーマ王子の妻となったシーダー妃がトサカンにさらわれ、ラーマ王子のシーダー妃救出の冒険と戦いが始まります。ラーマ王子の家臣である白猿ハヌマーンの大活躍もあり、ついにシーダー妃を救い出し、アヨータヤーの都に凱旋する場面で終わります。この長い物語の全178場面が壁画に描かれていて、物語を知らない人にとっても大変見応えがあります。でも、少しでも物語を知っていれば、有名な場面の絵が見つけられたりして、もっと楽しめるでしょう。
③プラサート プラテープ ビドーン(ロイヤルパンテオン)
本堂の隣にあるモザイクタイルが美しい宮殿は、ラーマ5世王の時代に建て替えられたものです。館内には歴代王の彫像が祀られているそうですが、観光客は立ち入ることが出来ません。
この宮殿は、個人的には、エメラルド寺院の中で最も美しい建物だと思います。宮殿の前には黄金の仏塔が二基あり、その周囲にはヒンドゥ神話のヒマパンの森に住む伝説の生物たちの彫刻が立ち並んでいます。タイは仏教国といわれていますが、タイに住んでいるとタイの文化がヒンドゥ教や古代インド文化の影響を強く受けていることが分かります。この辺りは奥が深すぎて、私にはなかなか理解することが出来ないのですが、この古代インド神話の世界がタイの仏教文化に独特の魅力を添えているような気がします。何よりエキゾチックな雰囲気に溢れていて、ついつい写真を撮りたくなってしまいます。
また、この宮殿の入口の横にある美しいモザイクが施されたブルーの壁は、エメラルド寺院の中で最も写真映えする場所だと思います。いつも観光客が多すぎて、他の人が写り込まないようにソロ写真が撮ることが難しいのですが、もし運良く人が途絶えたら、記念写真は是非ここで撮ってくださいね。
④ほかにもいろいろな見どころが
以上の3つがメインの見どころとなりますが、他にも細部に様々な見どころがあります。
タイ医学の祖として知られるチーワカ(ジーヴァカ)医師の銅像は、寺院に入場してすぐの本堂の裏手にあります。チーワカ医師は、インド伝統医学の医師であり、ブッダの主治医として有名です。インドの伝統医学がタイに伝わり、タイ独自の医学として発展したのがタイ医学で、有名なタイマッサージも元はタイ医学の治療法の1つです。チーワカ医師の銅像は、タイ医学のクリニックなどに行くと必ず見かけるのですが、なぜエメラルド寺院にも銅像があるのか、個人的にとても気になっています。
エメラルド寺院にはかなり大きなアンコールワットの模型があります。これはカンボジアがタイの領土(正確に言えば属国?)だったころ、ラーマ4世王がバンコクの人々にクメール遺跡の素晴らしさを見てもらいたいと思い、わざわざ調査団を派遣して、バンコクに作らせたものだそうです。だとしても、なぜ唐突に寺院の中に登場するのか、ちょっと不思議な光景です。
最後に、本堂の脇にあるパステルカラーの美しいモザイクの鐘楼です。淡い色使いが何とも優しく繊細な建造物です。近づいてその優美なモザイクを鑑賞してみて下さい。
長々と書きましたが、それでもまだまだ書き足りないくらい、エメラルド寺院にはタイ王室の歴史と文化が詰まっています。エメラルド寺院へは自分で行くこともできますが、もし初めて行くのであれば、是非ガイドさんに連れていってもらい、細部についてきちんと説明してもらった方がより楽しめるでしょう。
エメラルド寺院 の基本情報
The Emerald Buddha Temple
住所:Na Phra Lan Road, Phranakorn, Bangkok, Thailand
開館時間:8:30〜15:30(王室行事のある日は休館になる場合があります)
服装:肩や膝のかくれた服装、レギンスなど体のラインが見える服装も不可
入場料:外国人500バーツ(タイ人は無料)
アクセス:BTSサイアム駅よりタクシーで10分。MRTサナームチャイ駅より徒歩20分。ターチャーン桟橋から徒歩5分。
ウェブ:https://www.royalgrandpalace.th/en/home
エメラルド寺院のマップ: