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トレッキングの舞台は世界自然遺産カオヤイ国立公園
カオヤイ国立公園(Khao Yai National Park)は、タイ東北部のナコンラチャシマ県、プラチンブリ県、サラブリ県、ナコンナーヨック県の4県にまたがる広大な国立公園です。
絶滅危惧種を含む多様な動植物が生息する貴重な熱帯雨林と草原を有し、2005年には「ドンパヤーイェン・カオヤイ森林群」として世界自然遺産に登録されました。
園内ではキャンプやバードウォッチング、そしてトレッキングなどを通して、南国の豊かな自然を体感することができます。
2019年1月、私は山歩きが好きな両親とともに、カオヤイ国立公園でのトレッキングに出かけました。事前にウェブサイトで情報収集を試みましたが、ツアーではなく個人でカオヤイ国立公園を訪れる具体的な方法は、ほとんど見つかりませんでした。
過去に一度訪れた記憶を頼りに、「まずは行ってみるしかない」と半ば手探りで計画を立て、現地へ向かったのです。

しかし、その判断は想像以上に危ういものでした。
カオヤイでのトレッキングは、やがて“恐怖のトレッキング”へと変わっていきます。
しかし幸いにも、無事バンコクへ戻ることができました。
これからカオヤイ国立公園を訪れてみたい方の参考になればと思い、その一部始終をまとめます。



カオヤイ 国立公園 への行き方
カオヤイ国立公園を訪れるには、基本的に車での移動が必要です。公共交通機関だけでアクセスするのは難しく、私は運転手付きのハイヤーを手配して向かいました。
バンコクからは車でおよそ2時間半から3時間ほど。朝早く出発すれば日帰りも可能な距離です。
ただし、カオヤイ国立公園の周辺はタイでも有名な高原リゾート地として知られ、お洒落なリゾートホテルが点在しています。ゆっくり自然を楽しむなら、一泊するのもよい選択でしょう。
なお、公園内に宿泊施設はなく、利用できるのはキャンプ場のみです。

カオヤイのトレッキングコース
カオヤイ国立公園に到着すると、まずゲートで国立公園の入場料を支払います。車両ごとの料金も必要になるため、事前に現金を用意しておくと安心です。
その後、園内にあるビジターセンターへ向かいました。
ビジターセンターでは、公園内の地図を入手できるほか、トレッキングコースの情報を確認したり、ガイドを手配したりすることができます。初めて訪れる場合は、ここで最新の状況を確認しておくとよいでしょう。

トレッキングコースは全部で6つありました。
以前、ガイド付きで45分間の最も簡単なコース(No.1)を歩いたことがあったため、今回は2番目にやさしい2時間のコース(No.2)を希望しました。
ところが、受付のスタッフから告げられたのは、少し意外な説明でした。
ガイドを手配できるのは難易度の高いNo.3〜6のコースのみで、No.1とNo.2は「簡単だから自分たちで歩いてください」とのことだったのです。
思わず「え?」と戸惑いました。
ガイドが必要なのは難しいコースだけ。つまり、No.2は安全で分かりやすいという判断なのでしょう。
ここまで来たのだから引き返す選択肢はない。道も分かりやすいと言われたのだから大丈夫だろう——そう考えて、私たちはNo.2のコースを選びました。
なお、No.3〜6のコースは川を渡る区間もあり、より本格的なアドベンチャールートだと説明を受けました。

私たちが選んだのは、クルアイマイ崖からへウスタット滝まで、川沿いを歩く約2時間のコース(No.2)でした。
その日は朝にバンコクを出発し、途中でカオヤイ周辺のリゾートエリアに立ち寄って昼食をとりました。ビジターセンターに到着したのは午後2時。手続きを済ませ、実際にトレッキングへ出発したのはすでに2時半を過ぎていました。
所要時間は約2時間。単純に計算すれば、歩き終えるのは夕方です。
この時点では、その時間帯に出発することの意味を、深く考えてはいませんでした。

ジャングルの中のトレッキングコース
ビジターセンターからNo.2コースの出発地点までは、車で移動しました。
トレッキングコースの入口に設置された案内図は、長年の風雨にさらされているのか、文字がかすれていて判読しづらい状態でした。それでも念のため、現在地とルートが分かるよう写真を撮っておきました。
運転手さんはゴール地点で待機しているとのことでした。「何かあれば電話してください」と告げられ、私たちは入口から森の中へと足を踏み入れました。
そのときはまだ、電話を使う事態になるとは思っていませんでした。

いよいよトレッキングのスタートです。
踏み固められた道が続き、これまでにも多くの人が歩いてきたことが分かります。最初は安心感があり、私たちも順調な足取りで進んでいきました。
途中、2組の西洋人カップルが軽やかな足取りで私たちを追い越していきます。自分たちだけではないという事実が、心強く感じられました。
道にはところどころ木の根が大きく盛り上がり、背の高い木々が空を覆っています。視界はやや閉ざされ、あたりは濃い緑に包まれたジャングルの雰囲気そのものでした。
それでもこの時点では、不安よりも高揚感のほうが勝っていました。

歩き始めて1時間以上が過ぎたころ、先ほど私たちを追い越していったカップルのうちの一組が、引き返してくるのに出会いました。
「この先は森がとても深くて、これ以上は進めないよ。」
そう告げられ、胸の奥に小さな不安が芽生えましたが、私たちはそのまま進むことにしました。
ハイキングトレールとはいえ、途中に案内板や目印はほとんどありません。頼りになるのは、人が通った形跡のある細い踏み跡だけです。
崖沿いの細い道にも柵はなく、足元に注意しながら慎重に進みます。
一度、道が二手に分かれている場所がありました。どちらが正しいのか示す表示はありません。確信は持てず、最後は勘に頼って左側の道を選びました。

鬱蒼としたジャングルの中を、川のせせらぎと野鳥の鳴き声をBGMに、私たちはひたすら歩き続けました。
やがて沼地のような場所に出ると、「ワニに注意」という看板が立っています。
その文字を目にした瞬間、ここが観光地である以前に、野生の世界なのだと強く意識させられました。そういえば、カオヤイ国立公園には野生の象や虎も生息していると聞いたことがあります。
自分が“本物のジャングルの中”にいるのだと実感した、その直後でした。
それまで続いていたはずの踏み跡が、ふいに消えたのです。
立ち止まり、周囲を見渡しても、それらしい道は見当たりません。
そのときようやく、私たちは道に迷っているのだと気づきました。

GPSだけを頼りに歩き続けてようやくゴール
そこは、もはや道とは呼べない場所でした。
ひとまず引き返そうとしましたが、どこで道を外れたのか分かりません。つまり、どこまで戻れば正解なのかも分からないということです。
胸の奥から、不安が一気に込み上げてきました。
とっさに携帯電話を確認します。時刻はすでに4時半。予定していた2時間を大きく過ぎ、あたりは薄暗くなり始めていました。
そして、さらに重大な事実に気づきます。
——電波が入らない。
山が深いためか、携帯は圏外。
当然、Google Mapも開けません。運転手とも連絡が取れず、外部に助けを求める手段がないのです。
もし日が暮れるまでにここから抜け出せなければどうなるのか。
昼間でさえ「ワニに注意」の看板が立つ場所です。夜になれば、野生動物が活動する時間帯になります。
その可能性を現実として想像した瞬間、冷静さは一気に崩れました。
この時点で、私は本気で半泣き状態でした。

しかし、ふとGoogle Mapの画面をよく見ると、思いがけないことに気づきました。
自分たちの現在地が表示されている——。
さらに、川の流れと滝の名前まで確認できます。
携帯の電波は失われていましたが、GPSは生きていたのです。
その事実を理解した瞬間、身体に少しずつ力が戻ってきました。行くべき方向が分かっただけで、恐怖は完全ではないにせよ、制御できるものに変わります。
とにかく、ゴールへ向かわなければならない。
幸い、このコースは川沿いです。川の流れに沿って進めば、必ず滝へ出るはずだと信じ、私たちは無言で歩き続けました。

しばらく進むと、川の上に一本の倒木が渡されている場所に出ました。
よく見ると、それが対岸へ渡るための“橋”だったのです。どうやら先ほどは、この渡り口に気づかず通り過ぎてしまっていたようでした。
——せめて「ここを渡る」と書いておいてほしい。
そんな恨み言を心の中でつぶやきながら、慎重に倒木の上を渡ります。
対岸に降り立つと、そこにははっきりとした道が続いていました。
間違っていなかった。
その安堵とともに、私たちは早足でゴールを目指しました。あたりはすでに夕闇が迫っています。
そしてついに、コースの先に人影が見えました。
心配そうに立っている運転手さんの姿です。
その姿を確認した瞬間、全身の力が抜けました。
到着したのは午後5時半。予定より1時間も遅れていました。国立公園のゲートは通常5時に閉まりますが、運転手さんが事情を説明してくれていたおかげで、私たちが戻るまで開けておいてもらえたのです。

ドライブだけでも楽しめるカオヤイ国立公園
その日の夜は、カオヤイのリゾートホテルに宿泊しました。本来であれば、翌日もトレッキングをする予定でしたが、精神的にも肉体的にもすっかり疲れ切ってしまっていました。
そこで翌日はトレッキングを取りやめ、公園内を車でドライブすることにしました。
カオヤイ国立公園内の主要道路はきちんと整備されており、途中には展望台もあります。視界が開ける場所では雄大な森の景色を一望でき、草原では象や鹿が草を食べている姿に出会えることもあります。
緑に包まれた山道をゆっくりと走り、気に入った場所で車を停めて景色を眺める。それだけでも、十分にカオヤイの自然を満喫できると感じました。

初めての方は、無理をせずツアーを利用するのが安心です。
私たちのように勢いだけで挑戦するのは、どうか真似しないでくださいね。
きちんと準備をすれば、カオヤイは本当に素晴らしい場所です。


カオヤイ 国立公園 の基本情報
Khao Yai National Park
住所:Moo 4, Pak Chong, Nakhon Rachasima 30130 Thailand
国立公園入場料:(外国人)大人400バーツ、子供200バーツ
(タイ人)大人40バーツ、子供20バーツ
開園時間:8:00〜18:00
ウェブ:https://www.khaoyainationalpark.com/en/
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