※本サイトの記事には広告が含まれています
目次 非表示
- バンコク・トンブリ地区のお屋敷ホテル Neil Niwas(ニンニワート)
- トンブリ王朝の王宮があったトンブリ地区の歴史
- バンコクヤイ運河沿いにある旧貴族のお屋敷 Neil Niwas
- Neil Niwas(ニンニワート)を最初に建てた人物とは
- ホテルとして蘇った130年前のお屋敷 Neil Niwas(ニンニワート)
- 宿泊当日、憧れのホテル Neil Niwas にチェックイン
- Neil Niwas(ニンニワート)の建物の構造
- 宿泊した「フクロウ」のお部屋
- ホテルから徒歩でワットアルンまで散策
- こだわりの詰まった客室のアメニティ
- 早朝、朝食前にホテル周辺を散策
- 運河沿いでサプライズな朝食を堪能
- 貸切ボートでバンコクヤイ運河クルーズへ出発
- 水の都バンコクの原風景
- トンブリのローカルライフを満喫した1泊2日
- Neil Niwas(ニンニワート)の詳細情報
バンコク・トンブリ地区のお屋敷ホテル Neil Niwas(ニンニワート)
Neil Niwas (ニンニワート)は、バンコクのトンブリ地区にある元貴族のお屋敷を改装した小さなブティックホテルです。
トンブリ地区はバンコクを流れるチャオプラヤ川の西側の地区です。バンコク観光の人気スポット、ワットアルンやワットパクナムなどがあります。
ホテルは、バンコクヤイ運河沿いに約130年前に建てられた美しいコロニアルスタイルのお屋敷。建築家である現在のオーナーが7年かけて修復し、客室4室のみの小さなブティックホテル「Neil Niwas」として2023年にオープンしました。
先日、ホテルのオーナーにご招待いただき、Neil Niwas に宿泊する機会がありました。
トンブリ地区に今も残るバンコクの歴史や地元の人々の暮らしを垣間見ることができる素晴らしい滞在となりました。
トンブリ王朝の王宮があったトンブリ地区の歴史
Neil Niwas(ニンニワート)は、チャオプラヤ川の西側にあるトンブリ地区にあります。
現王朝のラタナコーシン王朝の創始者である国王ラーマ1世は、チャオプラヤ川の東側に王宮を建てました。そのため、現在バンコクの街は東へ東へと拡大しながら発展しています。
一方、チャオプラヤ川の西側は、ラタナコーシン王朝以前にあったトンブリ王朝の王宮があった地域です。
タイ王室にとって最も大切な仏像であるエメラルド仏(翡翠でできた仏像)は、現在のエメラルド寺院に移る前には、トンブリ王宮の守護寺院であったワットアルンに安置されていました。
しかし、トンブリ王朝の歴史はわずか15年と短く、ラタナコーシン王朝の発展の陰に隠れてしまうようになりました。
ただ、そのおかげで、トンブリ地区にはアユタヤ時代後期からラタナコーシン王朝初期の面影を残す史跡や街並みが今でも残っていて、私のようなタイの歴史好きにはたまらない、とてもマニアックな地域なんです。
バンコクヤイ運河沿いにある旧貴族のお屋敷 Neil Niwas
トンブリ地区の中心は、以前トンブリ王宮の敷地であったワットアルンです。地図をよく見ると、ワットアルンを中心に、北側にはバンコクノイ運河、南側にはバンコクヤイ運河が流れています。
このバンコクノイ運河とバンコクヤイ運河はつながった一つの運河です。
Neil Niwas(ニンニワート)は、このバンコクヤイ運河沿いに建っています。
バンコクヤイ運河は船ですぐにチャオプラヤ川に出ることができ、川の反対側にはパーククローン市場という大きな市場がありました。
そのため、100年以上前のバンコクでは、このあたりは商業の中心地でもあり、運河沿いには官僚貴族や商売で成功した富豪のお屋敷が立ち並んでいたそうです。
Neil Niwas(ニンニワート)を最初に建てた人物とは
ニンニワートのお屋敷を最初に建てて住んでいた人物は、当時官僚貴族として出世したプン・チュートー氏です。チュートー家は、タイ国王ラーマ1世のアマリン王妃の親戚筋にあたる由緒ある家系です。
プン・シュートー氏の腹違いの姉プリアンは、アユタヤ時代から続くペルシャ系タイ人貴族のポーン・ブンナーク氏に嫁ぎました。
余談ですが、彼女はタイで初めてのタイ料理レシピの本「メークルアフアパー(แม่ครัวหัวป่าก์)」を出版した人物として非常に有名です。
姉の後押しもあって、プン・シュートー氏はブンナーク家との繋がりをもち、英国留学のチャンスを経てタイ政府の農業省の高官として出世していきました。
タイの農地改革の一環として、土地登記制度を開始したのは、プン・シュートー氏の功績だということです。
しかし、プン・チュートー氏が亡くなり、遺族がお屋敷を相続していましたが、時代とともに維持が難しくなり、ついに売却されることになりました。
ホテルとして蘇った130年前のお屋敷 Neil Niwas(ニンニワート)
お屋敷を譲り受けたのは、お屋敷の隣に住んでいた中華系タイ人のマハシット家でした。
マハシット家のお嬢さんであるウィナーさんは、フランス留学経験もあるフリーランスの建築家。当初、ほぼ廃屋だったお屋敷を譲り受けたものの、利用方法などは何も考えていなかったそうです。
ところが、数年前にお屋敷が崩れかけているのに気づき、調査を依頼したところ、老朽化が進んでいて、これ以上は持ち堪えられないことがわかりました。
そこで、ウィナーさんはお屋敷の修復を決心しますが、こんなにも古いお屋敷の修復には相当な資金が必要となります。
そこで、資金に無理のない範囲で、少しずつ、少しずつ、自分の手で修復をすることにしました。
知り合いの建築職人を含めた3〜4人の小さな修復チームは、既存の建材をできる限り再利用しながら、なんと7年もの時間をかけて、大きな修復作業を自分たちだけで完成させました。
その後、ウィナーさんのこだわりがいっぱい詰まった修復作業によって美しく蘇ったお屋敷は、2023年にNeil Niwas(ニンニワート)という名前のホテルとして開業することになったのです。
宿泊当日、憧れのホテル Neil Niwas にチェックイン
バンコクの歴史を研究している私は、よくトンブリ地区を散策しています。Neil Niwasが新しくオープンしたことを知ると、絶対に泊まってみたいと思い、すぐにホテルに連絡をしました。
その時初めてオーナーのウィナーさんと話をし、念願かなって2024年4月に宿泊させていただく機会に恵まれました。
宿泊当日。タクシーに乗ってホテルに向かうと、車はイサラパープ通りを走り、かつてトンブリ王宮に仕えたイスラム系タイ人が住む集落の小さな路地に入りました。
ホテルの前に到着したものの、高い塀に囲まれていて、まるで民家のような佇まい。門の横にあった呼び鈴を押すと、しばらくしてホテルのスタッフが門を開けにきて、中に招き入れてくれました。
なんだかホテルというよりも、完全に個人のお宅を訪ねて行ったような感じです。敷地内には熱帯植物が生い茂り、ちょうど色鮮やかな黄色い花が咲き誇っていました。
お屋敷は2つの建物から成り、その間に小さなパティオがありました。右側の建物にチェックイン用のフロントロビーがあります。
ロビーには、かつてのオーナーであったプン・チュートー氏に関する歴史的な資料が展示され、ちょっとした博物館のような趣です。
Neil Niwas(ニンニワート)の建物の構造
少し待っていると、オーナーのウィナーさんが迎えてくれました。すでに電話で歴史に興味があることを話をしていたので、初めて会う気がせず、すぐに打ち解けてしまいました。
早速、お屋敷内を案内していただき、運河沿いにある建物でお茶をいただきながら、お屋敷の歴史や修復作業の様子について、詳しくお話を伺いました。
かつて船が交通手段だった時代、運河に面した側はお屋敷の正面玄関でした。運河沿いには専用の船着場があり、船着場のそばには使用人が使う小さな建物がありました。
正面玄関の前の広い庭には、ライチとチョンプーとマンゴーの大木が枝を広げています。おそらくお屋敷が建てられた当初からずっと植えられていたであろう、古い立派な木々です。
敷地内には2つの建物。一つは最初に建てられた木造の建物。もう一つは後に建てられたコンクリート製の建物。建材の違いによって、コンクリート製の建物が後から建てられたことがわかります。
右側の木造の建物は、かつてのオーナーの居住スペース。寝室や食事の場所です。曲線の美しい階段は屋敷の主人用、裏手の小さな階段は使用人用に分かれています。
2階のちょうど正面には仏間があり、かつてガラスもサッシもなかった頃の貴重な木枠の窓をそのまま保存して使用しています。
左側のコンクリート製の建物は仕事用に建てられたもの。当時のお役人は、役所に出勤するのではなく、自宅に部下がやってきて仕事をしていたのだそうです。戦時中はお屋敷の下が防空壕の役割も果たしていたのだとか。
それぞれの建物の2階部分に2室ずつ、合計4室の客室があります。客室には動物の名前が付けられ、インテリアも少しずつ違います。
どのお部屋も、ウィナーさんの素晴らしいセンスとアイデアで、とても居心地良く整えられています。
1階にはチェックインロビーのほか、ダイニングルームとリビングルームがあり、宿泊者が自由に利用することができます。
ホテルでは朝食以外の食事のサービスはありません。夕食などは外で食べるか、デリバリーやテイクアウトした食事をダイニングルームで食べることができます。
宿泊した「フクロウ」のお部屋
ホテルのことを詳しく説明してもらった後、私が宿泊した「フクロウ」の客室に案内してもらいました。以前は住居用だった建物の2階にあります。
クラシックな雰囲気でまとめられたインテリアは、とても可愛くてため息が出るほどでした。
もともと電気も水道もなかったお屋敷に、後から電線や水道管を敷設したため、剥き出しの電線をアルミのケースで覆い、クラシックなインテリアになじませるなど、あちこちに細かな工夫がしてあって、本当に感動しました。
部屋にはテレビも冷蔵庫もWifiもあって、一流のホテルと遜色なく快適です。
さらに、たった4室しかないホテルなのに、オリジナルのアメニティをわざわざ作ってあるのも驚きです。
ホテルから徒歩でワットアルンまで散策
お部屋でゆっくりしたかったけれど、日が沈む前に周囲を散策しようと、すぐに出かける準備をしました。
歩いて向かったのはワットアルン。ホテルから徒歩12分です。途中、トンブリ王朝の創設者であるタクシン大王を祀った祠や中華系仏教寺院ワットホンなどを通り過ぎます。
私自身は、ワットアルンは何度も行ったことがあります。ただ、いつもワットポーの近くにあるター・ティアン桟橋から渡し船を使って川側から行っていました。
陸側から歩いていくのは初めてです。寺院の裏側にもちゃんと入場券を買う窓口がありました。
また、ワットアルンの裏手には、最近流行りのタイ衣装レンタルのお店がたくさんありました。一軒のお店で料金を聞くとヘアセット込みで3時間150バーツだとか。お手頃なので、またいつか試してみようと思いました。
ただ今回は、ワットアルンには入らず、ウィナーさんに教えてもらったローカルグルメのおすすめ店に行ってみました。
まずルークチン(フィッシュボール)が有名な中華米麺(クイティアオ)店「サイサアート」。珍しい海南麺を見つけて注文しました。スープもルークチンも絶品です。
次に、タイの伝統菓子カノムブアンのお店「カノムブアン・ワットアルン」。クリームを入れない昔ながらのレシピもありました。塩辛味と甘い味も1つずつ選んで買って、ホテルに持ち帰りました。
どちらのお店も、観光客に有名なワットアルンのすぐそばにあるのに、ちょっと離れているだけで、全く観光客のいないローカルな雰囲気でした。
こだわりの詰まった客室のアメニティ
お部屋に帰って来て、早速カノムブアンを試食。水を出そうと冷蔵庫を開けてみると、ジャックフルーツの嬉しい差し入れが入っていました。
他にも、コーヒー、紅茶、タイのフルーツを使ったスナックなど、バーコーナーも充実しています。
お茶とお菓子で休憩してからシャワーを浴びました。昔の建物を改修したホテルで一番気になるのが水回り。
もともとはなかった水道を後から取り付けるのは大変なんですよね。でも、古いお屋敷の雰囲気に馴染む真鍮色のシャワーからは、たっぷりと温かいお湯が出て、街歩きの疲れを吹き飛ばしてくれました。
バスアメニティも一流ホテルと変わらない品揃えです。エコフレンドリーなブランドをわざわざ選んでいるところにもこだわりを感じました。
ちなみに、私の泊まったお部屋はシャワーのみでしたが、バスタブのあるお部屋もあるので、予約の時にお部屋のタイプを確認してみるといいと思います。
早朝、朝食前にホテル周辺を散策
一晩ぐっすり寝て、翌朝は5時に起床。近所のモスクのアザーンが聞こえる中、朝の涼しい時間に散歩に出かけました。
まず、歴史的にも芸術的にも政治的にも、タイで最も重要なモスク「トンソンモスク」へ。朝日を浴びる美しい姿をしっかりと写真に収めることができました。
次に、タクシン大王廟をお参りして、ワットホンへ。アユタヤ時代に裕福な華人によって建てられた寺院ワットホン。お堂の中には、仏教誕生の物語を描いた美しい壁画が描かれています。
かつて、Niel Niwasのお屋敷の主であったチュートー家も、地域の名士としてワットホンのスポンサーになっていたそうです。
運河沿いでサプライズな朝食を堪能
散策から帰ると、いよいよお楽しみの朝食です。運河沿いのダイニングルームに向かいます。
朝食メニューは、チェックインの時にリクエストしてありました。
メニューは、コンチネンタル、アメリカン、中華粥、チキンライス(カオマンガイ)、サプライズの5品から選ぶことができます。私は、その時々で内容が変わるという「サプライズ」を選びました。
すると、ウィナーさんは歴史好きな私のために、もともとイスラム教徒の集落があったこの地域の歴史にちなんで、ムスリム系タイ料理「カオモックカイ(タイ風ビリヤニ)」を準備してくれました。他にも、フルーツやタイ菓子も添えられたボリュームたっぷりの美味しい朝食です。
何よりも、パーソナルなチョイスをしてくれたウィナーさんの心遣いにとても温かい気持ちになりました。
貸切ボートでバンコクヤイ運河クルーズへ出発
ここまで書くだけで、ずいぶん長くなりましたが、最後にNeil Niwas滞在のハイライトであるボートトリップについてご紹介しましょう。
11時にホテルをチェックアウトして、ホテルのそばの桟橋から小さな貸切ボートで運河クルーズに出かけました。ウィナーさんのお知り合いの小さな船で、船頭さんは女性でした。
今回は、タイ国王ラーマ3世ゆかりの寺院「ワット・ラーチャ・オーラサラーム」に立ち寄り、最近人気のお洒落なガーデンレストラン「プームチャイガーデン」でランチを食べるという行程。
運河クルーズはトンブリ地区で一番人気のアクティビティですが、Neil Niwas で手配してくれるボートは1時間1,000バーツと、通常の観光用ボート(数千バーツ)よりも格安です。行程も自由にアレンジすることができます。
水の都バンコクの原風景
ボートが桟橋を出発して、バンコクヤイ運河沿いにあるタラートプルーやワットパクナムを通過し、ダン運河に入った途端、観光用のボートがいなくなりました。
川沿いには高床式のタイ様式の家屋も残り、民家には昔ながらの船着場が残っています。何だか100年前のバンコクにトリップしたような不思議な感じがしました。
チャオプラヤ川デルタにあるバンコクは、かつて人がとても住めないような沼地だったそうです。川が氾濫するのは当たり前で、人々は高床式の家を建てたり、船に住んだりして、水と共に生活していたのです。
モータリゼーションと共に世界最悪の交通渋滞で汚名を馳せる現在のバンコク。雨季になると毎年心配される洪水の被害。
それもこれも、本来の生活様式が変わってしまったことによる弊害なのだろうと思うと、何だか感慨深い思いでいっぱいになりました。
かつての「水の都バンコク」の原風景を垣間見ることができた、貴重なボートトリップでした。
「プームチャイガーデン」に到着してボートトリップは終了。レストランでランチを食べた後、いつも通りタクシーで帰宅。
100年前のタイムトリップから、一気に現実の世界に戻って来ました。
トンブリのローカルライフを満喫した1泊2日
Neil Niwasに滞在した1泊2日は非日常の連続でした。
オーナーのウィナーさんの心遣い、お屋敷修復にかける情熱やこだわりに感動しました。また、トンブリのローカルの人々との触れ合い、本来のバンコクの生活、歴史や文化を直接肌で感じることができました。
バンコクに20年間住んでいる私ですが、まだまだ知らないことがたくさんあるし、これからも新しい発見がしたいと改めて思いました。
ウィナーさんには滞在中ずっとお世話になり、すっかり意気投合して、再会を約束して帰って来ました。
小さなホテルですが、人とは違う体験がしたい、バンコクの文化や日常を感じてみたいという方に、全力でおすすめしたい、とっておきの宿だと思います。
4室しかない、とても人気のホテルなので、十分な余裕を持って予約してくださいね。
Neil Niwas(ニンニワート)の詳細情報
Neil Niwas นีลนิวาส
住所:86, Soi Itsaraphap 28, Wat Arun, Bangkok Yai, Bangkok, Thailand 10600
アクセス:MRTイサラパープ駅から徒歩6分
公式サイト:https://www.neilniwas.com
宿泊料金を旅行予約サイトでチェック!
Neil Niwas(ニンニワート)のマップ
こちらの記事もご参考に!
ワットアルン の見どころと驚きの歴史